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終わりはまだまだ遥か先の方だ

SixTONES「JAPONICA STYLE」楽曲レビュー 歴史をつむぐ革命の一歩(前編)

※本記事は前後編に分かれます。

前編では主に市場等を踏まえた状況論、

後編では具体的な楽曲論を語ります。

 

「JAPONICA STYLE」ーー。

 

 

YouTubeでMVが発信され、YouTubeアーティストプロモで使われた楽曲として、

SixTONESを知る上で極めて重要な曲であることは間違いないと思います。

 

ジャニーズをデジタルに放つ新世代。

 

そのスタートとしてこの曲がどういう意味を持つのか。

 

それを考えるには、まず前提を知っておかなければなりません。

この楽曲は『ジャニーズをデジタルに放つ』ために作られたのではない」という前提です。

 

この楽曲は、元々2017年の舞台「少年たち〜Born Tomorrow〜」のショータイムで

新曲として披露されて以降、コンサートなどでも披露されていた彼らの持ち歌でした。

 

すなわち、YouTubeのアーティストプロモが決まるより、

遥かに前に制作された楽曲だということ。

 

そしてその上で重要なのは、YouTubeアーティストプロモが決定した時点で、

この曲以外にも、彼らには複数のオリジナル曲があったということ。

同舞台で披露された「Beautiful Life」だけではなく、

「この星のHIKARI」や「BE CRAZY」もあった。

さらに、彼らがYouTubeで自分たちの代表曲を聞かれたとき、

全員一致で選んだ「Amazing‼︎‼︎‼︎」という楽曲もあった。

 

それでも「JAPONICA STYLE」が選ばれた。

 

そう、重要なのは、

この楽曲が「ジャニーズをデジタルに放つために『選ばれた』」ということなのです。

 

その前提を踏まえた上で、

僕は、この楽曲こそ日本の男性アイドル史において革命的な意味を持つ楽曲である、と

主張したいと思っています。

 

そして、そのためには、まずこれまでのジャニーズのネットプロモーションや

デジタルセールスへの姿勢について軽くお話ししなければいけません。

 

閉鎖から開放へ

あらためて説明するまでもないことですが、ジャニーズには、

これまでインターネットに対して、極めて閉鎖的だったという歴史があります。

 

代表的なものとしては、ウェブ媒体での写真や映像の使用制限。

不自然な加工でジャニーズの肖像だけがマスキング処理された雑誌の表紙などを見た経験、

ほとんどの方があるのではないかと思います。

 

ただし、より重要なのは、

楽曲やミュージック・ビデオの配信、各種SNSでの展開、

公式ウェブサイトなどでのビジュアルを含むオープンな発信--。

 

他のアーティストが今や当然のようにやっている

これらインターネット上のプロモーションやデジタルなセールス

ジャニーズはほとんど行ってこなかったという点です。

 

ジャニーズは、2018年1月31日、錦戸亮が出演した映画「羊の木」の記者会見にて、

ウェブの写真利用について一部解禁する方針を発表しました。

ここでジャニーズは

「近年のスマホを中心とした情報伝達・情報処理が大きな比重を占めるようになった

市場の変化に段階的に対応を試みている」と公式に説明しています。

※具体例として、ジャニーズWESTNetflix配信なども挙げられています。

 

そもそもどうしてジャニーズは、

このようにネット上でのプロモーションやセールスに対する閉鎖的な姿勢をとり続けたのか?

 

多くの論者がそう指摘しているように、これはネットメディアでの取り扱いを制限することで、

相対的に各種マスメディアの価値を押し上げ、

結果として各種マスメディアに重用されることを狙っていた、という点が大きいだろうと思います。

※わかりやすい例をあげて話せば、ネットへの露出を制限することで、写真が掲載された雑誌の売り上げが上がる、というような話です。

 

それと同時に、ダウンロードやストリーミングへの進出などについては、これまでその必要がなかった、という点が大きいでしょう。

 

世界ではストリーミングおよびダウンロード市場が拡大している一方、

日本では、パッケージ販売の持つパワーが依然として強いです。

CD、DVD、Blu-rayなどパッケージメディアの売り上げが全体の80%を占めるというのが現状です。

さらにアイドル市場では、複数枚購入や特典商法などアイドル特有の購買事情も手伝って、

その傾向に拍車がかかっているという点も無視できません。

 

しかし、これまでビジネスモデルの転換が遅れ、他国の後塵を拝してきた日本の音楽市場も、

各レコード会社および消費者の意識変容に伴って、

今後はダウンロードおよびストリーミング市場が拡大されるだろうと予想されます。

 

また、YouTubeTwitterなどをはじめとしたネットでの音楽プロモーションも、

すでにその重要性をますます無視できない状況へと変わってきています。

 

こうした背景を踏まえ、これまではネットの活用に奥手であったジャニーズも、

市場の変化に対応せざるを得なくなってきている、というのが、

現状の妥当な見方ではないか、と僕は考えています。

 

ライバルはK-POP

次に、グローバル音楽市場におけるアジア系男性アイドルグループの覇者であるK-POP

とりわけBTSについて言及したいと思います。

 

2018年、それは世界の男性アイドル市場に大きな変化が起きた年でした。

その最も重要な出来事のひとつは、

BTSのアルバム「LOVE YOURSELF 轉 'Tear'」が

アメリカの「ビルボードチャート200」で1位を獲得したという快挙です。

 

この快挙を語るにはこのブログの記事内では足りないと思いますし、

そもそも僕には専門外な部分も大きいので詳しくは割愛します。

 

重要なのは、アジア系男性アイドルが活躍できる市場が拡大しているという点です。

 

アメリカやヨーロッパの人々が、アジアの男性アイドルに、いま、強く興味を持っている。

今はまだK-POPにその台頭を許していますが、

J-POPにもその市場で戦える力は十分にあります。

 

現にグローバルな女性アイドルシーンでは、

48グループ、Perfumeハロプロなどが十分なプレゼンスを発揮しています。

 

もちろん、J-POPとK-POPでは背景が異なります。

J-POPは国内市場が比較的豊かなので、グローバルな活躍を志向しなくても、

国内向けのドメスティックな展開で十分なビジネス展開ができます。

だからこそ、ジャニーズもこれまで国内向けの展開に注力してきました。

 

一方、K-POPには、国内市場だけでなく日本市場をターゲットに含めることで

ビジネス拡大を図ってきた経緯があります。

アメリカを含むグローバル展開を成功させられたのも、

こうした経験が強みになっていることだろうと思います。

 

こうしたアジア系男性アイドル市場のグローバルな拡大を背景として捉えると、

やはりSixTONESにも、そうした世界展開を見据えていていただきたいところです。

ジャニーズ事務所が本当のところどう考えているかは別にして、

僕はファンとして、事務所にそういう考えでSixTONESを売り出して欲しい、と考えています。

 

実際、BTSがヒットした背景を考えると、SixTONESにも勝機を感じられます。

BTSがヒットした背景には、ストリーミングの再生やTwitterでのバズなども含め、

ファンのダイレクトな頑張りがあったと言われています。

また、BTSは、単純な楽曲・パフォーマンスの良さだけに偏重せず、

メンバー間の仲の良さなどのコンセプトイメージも強い売りにしてきました。

こうした点では、SixTONESもその強みを十分に生かすことができるだろうと僕は考えていますし、

これは他のファンの皆さんにも頷いていただけるものと思います。

 

革命の一歩

ここまでの話を踏まえた上で、

「ジャニーズをデジタルに放つ新世代」とは一体何なのか。

 

それはすなわち、

これまで国内向けのクローズドな展開をしていた日本男性アイドルの覇者が、

満を持してグローバルなアジア系男性アイドル市場に挑んだ。

そういう歴史的な出来事を言い表すキーフレーズなんです。

 

そして、そのフレーズと共に歌われた「JAPONICA STYLE」は、

グローバルなアジア系男性アイドル市場において、

日本の男性アイドル・SixTONESがそのスタートラインに立った、

言うなれば「革命の一歩」として歴史的な一曲なのだ、と僕は考えています。

 

また、「JAPONICA STYLE」は、

その革命を支えるにふさわしい、見事な音楽性と世界観を兼ね備えた一曲でもあります。

 

その具体的な楽曲の中身に踏み込んだ内容を、後半でまた詳しく語りたいと思います。