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終わりはまだまだ遥か先の方だ

【ドラマレビュー】間違うことでたどり着ける場所がある。「パーフェクト・ワールド」を観た松村北斗ファンの感想。

ドラマ「パーフェクト・ワールド」を、最終回まで鑑賞しました。

 

ブログ読者にはご察知の通り、渡辺晴人役で出演した松村北斗が目当てです。

 

僕は、かつてドラマの脚本家になりたいと思い、

大学時代には映画研究会で脚本を書いて映画を撮ったこともあるドラマ好きでした。

ただ、最近ではすっかりそんな気持ちも忘れ、

ワンクールにドラマを1本観るか観ないかという程度。

 

パーフェクト・ワールドは障害者と健常者の恋愛を題材にした作品です。

障害者のお涙頂戴をやるのか?  美男美女の浅い恋愛ドラマか?

数年前までの自分なら、こんなひねくれた考えで観なかったでしょう。

けれど、このドラマは最後まで観ると最初から決めていました。

 

何故なら、SixTONES松村北斗が出ているドラマだから。

きっと自分にとっていい刺激になる素晴らしい作品になるに違いない。

そう思いました。

 

好きなアイドルが出るから……たいした理屈もない思い込みです。

でも、人生には、こんな理屈抜きの確信も時々あります。

 

ただ、観るドラマのチョイスくらいならともかく、

人生をともにするパートナーのチョイスとなると、

人はその思い込みを簡単には信じ抜くことができません。

理屈をこねるのも当たり前です。

 

そんな中、このドラマへの僕の確信は当たっていました。

本当に良いドラマでした。

 

この作品は、人生を共に歩むパートナーを選ぶなかで、

間違った理屈をこねつづけてしまう」人物たちを描きます。

 

作品を見終えた今、この作品は非常に同時代的な作品だったのだなと感じます。

 

僕が思い出すのは、2017年に注目を集めたゼクシィのキャッチコピーです。

結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです。

 

未婚率・離婚率の上昇やLGBTの顕在化、多様な家族のあり方が議論され、

結婚やパートナーシップを取り巻く社会状況が複雑化している中で、

現代の人々は今、恋愛を超えた「パートナーシップ」に強い関心を持っています。

同時期に放映された「きのう何食べた?」や「わたし、定時に帰ります」も、

パートナーシップへの社会の関心が反映されたような作品でした。

 

そんな中、パーフェクトワールドという作品は、

そんなパートナーシップへの悩みがつきない現代の僕たちに、

間違うことで辿り着ける場所がある」ということを教えてくれる作品でした。

 

本作の登場人物たちは、誰もが間違いを犯します。

 

相手が自分を想っていないと、心のどこかで分かっているのに。

自分が相手を想っていないと、心のどこかで分かっているのに。

障害を理由にした自暴自棄だと、心のどこかで分かっているのに。

障害を理由にした差別偏見だと、心のどこかで分かっているのに。

 

間違えてしまう。

何度も、何回も。

 

とりわけ、最終回の直前まで何度も何度も間違い続けてしまうヒロイン。

山本美月が演じる本作の主人公・川奈つぐみはその象徴でした。

 

視聴者の中には、このドラマに苛立ちを感じた人も多いだろうと思います。

間違いを繰り返して周囲を傷つける登場人物は、

もちろん見ていて気持ちが良いものではないからです。

川奈つぐみを好きになれない視聴者は、結構いたんじゃないでしょうか。

 

けれど、本作のメッセージは、実はその部分の苛立ちにこそありました。

間違って、周囲を巻き込んで、傷つけて、泣いて、苛立たせて……

でも、そういう間違った道を通らないと正解にたどり着けない愚かさを、

たぶん僕たちは誰しもが抱えているのだろうと思うのです。

 

このドラマは、原作である漫画「パーフェクトワールド」とは大きく異なります。

僕は原作も既刊すべて読んでいますが、かなり見事で大胆な改変が加えられています。

とりわけ素晴らしかった改変は、やはり松村北斗演じる渡辺晴人の設定だったと思います。

 

原作では高校生。ドラマ版では建築事務所で働く樹の後輩。

晴人は見事に大きく異なる設定で描かれました。

間違い続けるつぐみと樹に対して、

このドラマで最も早く間違いに気づけたのが、渡辺晴人でした。

 

晴人も障害を持っていることに対して自暴自棄になったり、

義足を隠して無理して明るく振る舞ったりするエピソードが描かれます。

しかし、そんな間違いを犯しながらも、

つぐみと樹のエピソードの陰に隠れて、

しおりという運命の相手と幸せに向かうプロセスを育んでいきます。

 

つぐみや樹のエピソードが間違いだらけでハラハラするものだっただけに、

ドラマの中で晴人としおりに癒された視聴者も多かっただろうと思います。

制作サイドもたぶんそれを分かっていたんでしょう。

「はるしお」「ほっキュン」などのハッシュタグを発信していました。

 

けれど、本当は、どうでしょう?

「はるしお」はそんな苦しい間違いを通らずに、本当に一気に仲良くなれたんでしょうか?

家でゲームしてアメちゃんをもらうまで、晴人は、しおりは、

樹のように、つぐみのように、悩まなかったでしょうか?

たぶん、違うはずです。

ドラマでは描かれなかった2人だけの葛藤も、たぶん、きっとあったんです。

間違わなければたどり着けない場所に、たぶんこの2人も、たどり着いたんでしょう。

 

本当のことはきっと2人しか知りません。

脚本家さんによれば、はるしおはハッピーエンドになるんだそうで。

その道のりがどれだけデコボコしているかは明かされません。

でも、それでよいんだと思います。

2人とも、一見お調子者で、笑顔で、強く生きてるように見えて。

義足を外せるのは、しおりの前だけ。

 

それってまるで、アイドルのようだ。

 

ファンの贔屓目があることは承知の上で、

渡辺晴人は、アイドル・松村北斗でなければならない役だったのだなと思いました。

2ヶ月間、ドラマ楽しませていただきました。

次は森本慎太郎が出演する「監察医朝顔」を楽しみにしています。