飛び込むBlue

ハロヲタ、30代男性、2019年、ジャニーズにハマる

SixTONESの音楽的進化が楽しみで仕方がない。滝沢社長は、田中樹が持つヒップホップの魂をどう活かすだろうか。

世界でSixTONESが活躍するのに大事なものって何だと思いますか?

 

断言できます。音楽です。

だからデビューを控えた今、SixTONESファンの僕らとしては、

基本的には「滝沢社長マジで頑張ってくださいよ」というほかない。

めちゃめちゃいい曲をSixTONESで出して下さい」と。

 

アイドルの宿命として、基本的には、音楽性はプロデューサーに依存します。

もちろんそれだけではない。メンバーの音楽的素養が持つ影響も大きい。

僕はSixTONESが持つ音楽的素養は驚くほどバランスが良いと思う。

 

コンテンポラリーダンスなど前衛性/芸術性の高い表現を好む北斗。

エリザベートを通して本格的にミュージカルを学んだ大我。

自らの武器としてボイスパーカッションを身に着けた髙地。

ジャズ、カントリー、フォークソングなど、

アンプラグド(アコースティック・ミュージック)に強いジェシー

欧米の最新EDMへの関心が深く、ソロなどでも挑戦している慎太郎。

そして、ヒップホップ*1に魂を売っている樹。

 

6人全員の音楽的な方向性は見事にバラバラで本当に面白い。

けれど、その中でも僕が特にワクワクしているのは、

ヒップホップに魂を売った男・田中樹という存在です。

 

「ヒップホップ」という樹が持つ武器は絶対に重要になる。

なぜならばSixTONESは北米への進出を誓ったグループだから。

全米の音楽チャートのトップ10すべてがラップという状況も、今やめずらしくないほど、アメリカではヒップホップ熱が過熱している。

 

また、アジア系ボーイズアイドルでもあるSixTONESにとっては、同ジャンルにおいて、決して避けては通れないライバルがいます。

韓国のヒップホップを武器にしたボーイズK-POPグループたちです。

奇しくも東京ドームでSixTONESのデビューが発表された同日、韓国ではSuper Mというグループが結成されています。このグループにもラップができるマークというメンバーが入っています。

 

2018年、K-POPを代表するグループ・BTSのアルバム「LOVE YOURSELF 轉 'Tear'」が、アメリカの「ビルボードチャート200」で1位を獲得しました。

BTSが爆発的に米国で売れた経緯はあまり単純ではありません。K-POPに詳しい音楽ライターのまつもとたくおさんも「BTSがアメリカで人気が出た理由って音楽的にはうまく説明できていない」と話しています。

彼らのアイドル性はもちろん大きい。BTSは当初ダンスが苦手だったグループだけれど、徹底したトレーニングで高度なダンスパフォーマンスを習得した。この成長を見届けたファンの結束も大きい。そこでSNS上で大きな影響力を誇ったファンダム(ファン組織)、ARMYの力がある。さらには、韓国政府の支援という極めて政治的な側面まである。

ただ、音楽チャートは当然それだけでは絶対に動かない。

 

「柔軟な変化ができるヒップホップグループであったこと」。

これが極めて重要なポジショニングだったというのが僕の見解です。

 

 

少し上記のBTSの音楽を聴いていただきたいんですが、ヒップホップにあまり明るくないような方が聴くと少し驚かれるはず。

「これ、ヒップホップなの? これなら好きかもしれない……」

僕にはその気持ちがすごくわかる。

僕自身、もともとヒップホップにずっと興味を持てなかった人だったからです。

たぶん日本の音楽ファンにはそういう人、多いんじゃないかと思います。

 

その理由には、90年代ごろから、ヒップホップに対して、暴力的、女性蔑視、犯罪礼賛といったダーティなイメージがつきまとっていたことが大きいと思います。

イメージと言ってしまうと「本当はそんなに暴力的なものじゃないんだよ」という返しもありそうですが、ありません。

ヒップホップにそういう暴力的な側面があったのは事実だから。

80年代に登場し、90年代に流行した「ギャングスタ・ラップ*2」のムーブメントがまさにそれ。

けれどそれでも、ヒップホップの本質は、そういう暴力性や女性蔑視、犯罪礼賛といった部分にはありません。

 

ヒップホップの本質は「ゲーム」。

「リリックやサウンドで競い合い、

 誰が一番強くてカッコいいやつなのかを戦って、優劣を決めるゲーム」。

これがヒップホップという音楽に脈々と受け継がれてきた文化です。

この本質に立ち返ることができれば、実はヒップホップというのはボーイズアイドルと極めて相性がいいんです。

ボーイズアイドルはまさにカッコよさを競いあう文化だから。

 

ただ、前述したように、90年代までのヒップホップには「ダーティーさ」がずっと付きまとっていました。これがダーティーさと真逆の「クリーンな」イメージを大切にするアイドルとはずっと相性が悪かったんですよね。

 

しかし、00年代後半、ヒップホップには風向きの変化がありました。従来のギャングスタ・イメージをくつがえす内省的な音楽が出てきたことです。

そしてヒップホップはアメリカのチャートにおいての存在感をどんどん大きくしていきました。

このころの代表的なアーティストであるカニエ・ウエストは、最愛の母の死去、婚約者であったアレクシス・ファイファーとの破局などを歌い、これが全米1位を記録しています。

 

さらに、10年代前半には、フランク・オーシャンというアーティストが、初恋相手が男性だったとカムアウトしました。女性蔑視や同性愛嫌悪が強いとされていたヒップホップカルチャーに衝撃を与えるカムアウトでしたが、ここにヒップホップのスターアーティストたちはいっせいに支持を表明したといいます。

このころにはギャングスタ・ラップは完全に衰退しています。

 

つまり、2000年以降、めちゃくちゃ平たく言うと「ダーティーなヒップホップ」が衰退し、一種「クリーンなヒップホップ」が台頭してきた。

それはヒップホップとボーイズアイドルとの相性が良くなってきたということも意味します。

 

2012年に韓国でヒップホップ・ブームが巻き起こりました。火付け役はヒップホップオーディション番組「SHOW ME THE MONEY」。

韓国にはBTSと同じくヒップホップ・アイドル・グループである「iKON」というグループがあるんですが、この「iKON」のメンバー・BOBBYが、「SHOW ME THE MONEY」でBTSのメンバー・RAP MONSTERに対して、ラップで強烈なDISを仕掛けました。RAP MONSTERはそれに応戦し、アンサー曲として「RM」を披露。

こうした盛り上がりにより、韓国ではもともとヒップホップ好きだった男性だけでなく、女性ファンに対してもヒップホップシーンが広がりを見せるようになりました。

それが最終的にはBTSの全米ブレイクにまでつながっている。

 

こうした「ダーティーからクリーンへ」と言えそうなヒップホップの潮流を踏まえた時、僕はとあるジャニーズ・アイドルを思い出します。

KAT-TUN」です。

 

KAT-TUNはきわめて不良的なイメージのグループとしてスタートしています。

サウンド面では、ロックテイストやダンスチューンの色合いが濃いグループだったので、ヒップホップ・グループとして認識はされていませんでしたが、「俺が一番強くてかっこいいんだ」というオラオラ感のあるスタイルは、まさにヒップホップ・マインドですし、「俺がハスラーKID」と歌うJOKERこと田中聖が挑んだのはギャングスタ・ラップそのものです。

 

ただ、KAT-TUNは、グループとしてアイドルと不良的なダーティー・イメージの両立をつづけることができませんでした。一部メンバーの不良的な振る舞いが、アイドルグループとしての存続を危ぶませるほど、本当にダーティーなものになってしまった。

けれど、2016年から2018年に経た「充電期間」で3人となったKAT-TUNは生まれ変わっています。

極めて「クリーン」なグループに。 

 

象徴的なのが、彼らの代表曲ともいえる「Real Face」をリメイクした「Real Face #2」です。

ラップ部分は脱退した田中聖の代わりに上田竜也が担当するようになっていますが、この新しいラップが興味深い。明確にギャングスタ・ラップだった従来の田中聖のリリックから、上田竜也のリリックではその不良的なイメージがごっそりそぎ落とされている。

上田竜也は「すべてヒストリー」と歌うのです。

従来のKAT-TUNが持っていたアンダーグラウンドなイメージは、これによって明確に過去にされたんじゃないかと僕は受け止めました。

この歌詞を誰が書いたのかはわからないですが、面白いなと思いますね。

 

 

ただ、ここで僕が注目したいのは、そう、SixTONESの田中樹です。

 

 

樹がラップ、ヒップホップにかける情熱は、たぶんジャニーズの中では別格だと思います。

時間が許す限り海外アーティストのMVでラップの研究を重ね、自分自身で作詞・作曲をしている。

僕がちゃんと現場で聞いたことがあるのは「CHANGE THE ERA -201ix-」で披露された「Swap meet」の一曲のみですが、この一曲だけでも樹らしさが大きく出ていて非常に興味深いです。

 

「Swap meet」の歌詞は公開されていないものの、ファンが聞き取った歌詞が複数ツイートされています。

ファンが聞き取った歌詞はバラバラなので、断定できることは何もありません。

ただ、それでもひとつ僕が感じたことを言うと、樹はアンダーグラウンドなイメージと重ねて「意味ない」「中身がない」「抗えない」そういう虚像のイメージを歌っているんじゃないか、という印象がありました。

 

「俺はハスラーKID」と歌った兄の田中聖は、不起訴ながら実際に逮捕され、いわば「リアル」なアンダーグラウンドの「ギャングスタ」でした。

上田竜也はこのアンダーグラウンドなイメージを「すべてヒストリー」と歌った。

そして田中樹はアンダーグラウンドなイメージを、「リアルでなくフェイク(虚像)だ」と歌っている。

 

樹がどういう想いを実際に込めているのかというのは、正直なところ分かりません。でも、アイドルだからこそできるヒップホップへの挑戦をやってくれるんじゃないか、こうして樹のスタイルを見ていると、そんな風に感じることがあります。

 

ブログでもいつもそう。樹の言葉には、場の空気を制圧し、一変させる強さがある。

僕は、蓮とビスの人狼ゲームについて中村海人のキラープレイをたたえるブログを書きましたが、樹に関しては少し違う見方もできたんじゃないかと後から思いました。

「言葉でバトルする/場を制圧する」という一面において、人狼ゲームって非常にヒップホップ的な部分があるんですよね。樹の振る舞いには批判もあったけど、場に与える影響力が反感を呼ぶほど発揮されていたという点に関しては、今思うとある種の強さとして評価してもよかったんじゃないかという気がします。

 

樹がこれから日本のボーイズグループをレペゼンするラッパーとして、どんな音楽性を発揮していくのか、楽しみで仕方がありません。

 

もちろん、実際にSixTONESがグループとして、今後どういう楽曲を出していくのかというのは正直分かりません。

それは正直、滝沢社長次第だろうと思います。

どういう音楽プロデュースを考えているのか。

 

これだけヒップホップに言及し、ヒップホップ×アイドルで成功したBTSの例や、ラップスタイルが変化したKAT-TUNの例を引いておきながら恐縮ですが、別に僕は「SixTONESは田中樹を生かしたヒップホップで世界に売り出すべきだ」――と思っているわけではありません。

 

なぜなら樹だけじゃない。SixTONESには6人それぞれに魅力的な音楽性があるからです。すべての武器を活かして、SixTONESにしかできない戦い方ができるかどうか、という話に結局は帰結するんですよね。

 

そう思うと、あえてすべては言いませんが、先日、あのステージでKing&Princeの「シンデレラガール」を選曲したのも、なんというか、痛快な感じがします。

SixTONESって本当に強気なグループになってるなと。

*1:本来「ヒップホップ」という言葉は音楽ジャンルのみを指すのではなく、ラップ、ブレイクダンス、グラフィティなどを含むヒップホップ・カルチャーのことを指す用語であり、音楽ジャンルのみを指す「ヒップホップ・ミュージック」と同義ではありませんが、この記事では慣用的に「ヒップホップ・ミュージック」の意味で「ヒップホップ」という言葉を使います。だって「ヒップホップ・ミュージック」って字面が長いでしょ。

*2:ギャングスタ・ラップは、ハスラー(売春の元締め)、プッシャー(麻薬密売人)など大概の悪事に手を染めているギャンググループのメンバー・アイスTが始めたとされるヒップホップの一大ムーブメント。