SixTONES「Imitation Rain」インプレッション――「デビュー曲の魔法」との戦い
先日、ベストアーティスト2019にてSixTONESのデビュー曲「Imitation Rain」が初披露されました。
※2019/12/10追記
SixTONES公式サイトから視聴が可能になっているため是非聴いてみてください
→こちら
その日、僕は仕事の都合でどうしてもリアルタイムで視聴することが叶いませんでした。
ようやく夜遅くに視聴が叶った頃には、すでにTwitterのタイムラインは「この曲どうなの!?」とでも言わんばかりの侃侃諤諤の反応が巻き起こっていました。
賛否両論。
楽曲全体そのものを否定している場合に関しては、
「最後まで聞いてもいないのに勿体ないなぁ」と思います。
まずはフルバージョンを待って欲しいです。
ただ、たしかに、断片で聞いただけでも、もちろん多少の判断はできますよね。
僕自身は、非常に面白い曲だという確信を得ることができました。
が、楽曲そのものを語るにはやはりフルバージョンを待たなければいけないと思うので、
それを待ってまたブログを書こうと思っています。
「Imitation Rain」というタイトルや歌詞の意味など……考察の余地はたくさんある楽曲なので、とにかくフルバージョンが楽しみです。
今回ブログに書こうと思ったのは、
「楽曲自体は否定しないけど、アルバム曲みたいな曲調だ」
「デビュー曲にふさわしい曲調ではないんじゃないか?」
という意見が散見されたことについて。
つまり、曲調の是非。
たしかに今回の曲調は、これまでのジャニーズのデビュー曲群とは、明らかに異なる曲調を持っています。
美しいピアノの旋律が印象的な、壮大な世界観と儚げな印象を纏ったミディアムロックバラード。
これがデビュー曲にはそぐわないのではないかという声があるようです。
確かに、ジャニーズに限らず、多くのアイドルのデビュー曲では、一度で耳に残るキャッチーなサビ、アップテンポなサウンド、そのグループのカラーを大きく反映したニュアンス、こういったものが重視される傾向があると思います。
分かりやすいのはKing & Princeの「シンデレラガール」。
キラキラとした王子様感というカラー、耳に残るサビのフレーズ、はなやかなアップテンポサウンドが重ねられています。
間違いなくたくさんの人々に届き、「King & Prince」のグループイメージ定着に成功したと言える一曲です。
こういうデビュー曲が持つ強いグループカラーのイメージインプリント(刷り込み)を、
僕は「デビュー曲の魔法」と呼びたい。
しかし、「デビュー曲の魔法」は、扱い方を誤ると、アイドルの可能性を狭めることにもなります。
本当はもっと様々なカラーの楽曲を歌えるグループでも、デビュー曲で与えたイメージに縛られ続けてしまう。
だからこそ、2作目や3作目には「デビュー曲とは違う戦い方で、次のファンを呼び込む」という戦い方がどのアイドルにも必要になります。
デビュー曲が強力であればあるほど、この「デビュー曲の魔法」に対する戦いは険しい。
この魔法はあまりにも強力なので、ほとんどのアイドルが苦戦していると思います。
そして実は今回、SixTONES×YOSHIKIによる「Imitation Rain」が狙っているのは、
「デビュー曲の魔法を作ることではない」というのが僕の考え。
むしろ、これは「デビュー曲の魔法」に対する戦いなのだ、と思います。
ではSixTONESの場合、その戦う相手である魔法はどの曲で生まれたのか?
答えは明快だ。
「JAPONICA STYLE」です。
グローバルなステージにおいて、SixTONESはすでにこの曲でデビューしているも同然なのだから。
SixTONESは「JAPONICA STYLE」が生んだ魔法に対して、戦いを挑んでいるのです。
これはSixTONES VS JAPONICA STYLEなのだと僕は考えています。
「JAPONICA STYLE」によって、SixTONESはいくつかのグループイメージを確立させました。
「ジャニーズをデジタルに放つ新世代」というのもそのひとつ。
ただそこにはもうひとつ、打破しなければならないもう一つのイメージがある。
海外進出によるブレイクを狙うSixTONESだからこそそれは避けて通れない道。
それは、すでにグローバルスタンダードとなっている
「K-POP」の「後を追うグループ」となるのではないかというイメージ。
逐一反論したいのはやまやまですが、JAPONICA STYLEに対して、
「K-POPみたい」とのたまう人が一部にいるのも事実です。
また、海外目線から考えても、アジアのボーイズグループということで、BTSを始めとしたK-POPグループと比較して捉えられることは避けられないでしょう。
だからこそ、今回のデビュー曲は、必ず日本独自のポピュラーミュージック史に深く根を張るサウンドでなければならなかったのだ、と僕は思います。
滝沢氏からプレゼンを受けて、「海外でのJ-POPのイメージを一新させる」楽曲提供を受諾したYOSHIKI氏。
壮大な世界観と儚げな美しさを感じさせる「YOSHIKIメロディ」は、様々なロックサウンドの中でも、ビジュアル系ロックバンドという日本独自の文化が牽引してきた曲調であり、K-POP陣営からは絶対に生まれない音だと思います。
要するに、これは「俺らはKPOPと同じような武器しか持ってないアイドルじゃないぜ。日本独自のビジュアル系ロックバンドカルチャーも武器にして戦っていくからな」という堂々たる宣言に他ならない。
そして何をおいてもそれを彼らが担うことが出来るのは、あの美しく洗練され鍛えられた彼らの歌声と、艱難辛苦を共に乗り越えてきた唯一無二のハーモニーがあるからです。
PRODUCE101JAPANがどれだけ頭数を揃えても、SixTONESが7年歌い続けてきたこの歌声にはかなうまい。
SUPER Mがどれだけ実力あるメンバーを選りすぐっても、SixTONESが7年かけて信頼しあったハーモニーにはかなうまい。
そう、だから、ファンは自信を持って彼らのこの華やかなファーストシングルを祝うべきだと僕は思います。
YOSHIKIさん、SixTONESにこんなに素敵なはなむけを、本当にありがとうございます。
10年たっても20年たっても、ずっとSixTONESが歌える曲が届けられたのだと確信しています。
フルバージョンを聴くのが本当に楽しみでなりません。