SixTONES「ST」インプレッション――少し、強くなった。
「凍りのくじら」という小説を読んだことがありますか。
小説家・辻村深月さんの人気作品です。彼女の作品の中で、本作が一番好きという人も多いだろうなと思います。
本作の主人公である芦沢理帆子は『ドラえもん』が大好き。
不二子・F・不二雄先生の
ぼくにとって「SF」は、サイエンス・フィクションではなくて、「少し不思議な物語」のSF(すこし・ふしぎ)なのです
という言葉に感銘を受けた理帆子は、作中で出会う周囲の人々を「少し・不幸(Sukoshi・Fuko)」/「少し・不自由(Sukoshi・Fujiyu)」/「少し・普通(Sukoshi・Futsu)」といったように、「SF(すこし・ふ○○)」に置き換えて自分なりに解釈していきます。
SixTONESのファーストアルバム、リードトラックの「ST」を聴いた時、僕はこの理帆子の言葉遊びを思い出しました。
SixTONES - ST (Music Video) [YouTube Ver.] (from Album “1ST”)
この楽曲タイトル「ST」の意味ってなんだろう。
それはきっと聴いたひとそれぞれが考えてみていいことだけれど、僕はこんな解釈がしてみたいと感じました。
少し・強くなった(Sukoshi・Tsuyokunatta)。
今回、SixTONESのファーストアルバムには、ほんとうに様々なジャンルの楽曲が詰め込まれています。
先日の6時間66分の生放送、僕もリアルタイムで聴いたのですが、出てくる楽曲出てくる楽曲どれも新鮮で、わくわくさせてくれるものばかりでした。
40曲以上のデモ曲の中から、6人全員で話し合ってアルバムに入れる曲を決めたと聞きました。それを聞いた時、思ったんですよね。
楽しかっただろうなって。
SixTONESがこういうことをできるようになったのは、長い間、ジャニーズという大きな大きな組織の中で、腐らずに歩み続けてきたからです。
入所して、10年以上。バカレアから、8年。結成からは5年。
それだけの月日を経て、ようやく「ファースト」だというアルバムタイトルにも感銘を受けます。
昨今、ジャニーズに限らず、大手事務所から離れて、YouTubeやInstagramなどインターネットを利用し、個人で活躍するタレントやアーティストが増えていますよね。
独立して、自分でチャンネルつくって、自分で何もかもやる。
もちろん、僕はそういう人たちもまたカッコイイとは思います。でも、その反面で、僕は中学時代の恩師から教わった言葉を思い出すのです。
「牛後(ぎゅうご)から始めなさい」。
これは、中国の故事成語「鶏口(けいこう)となるも牛後(ぎゅうご)となるなかれ」という言葉をもじったものです。
本来の故事成語の意味は「鶏の口になっても牛の尻にはなるな」ということで、「小さな集団の先頭になることはあっても、大きな集団の最後尾にはいるなよ」といういましめです。
でも、僕の恩師は、この故事成語の逆のことを言ったのです。
「いちばん大きな牛の、大きな集団の最後尾につきなさい。
そこから少しずつ強くなっていけばいいのだから。」
集団にいるメリット、それは、チームの力を借りて強くなれることです。
「自分ひとりのたった二本の足で歩いていける場所なんて、たかがしれている」。
そうやって自分の弱さを知っている人なら、自分が完璧じゃないと知っている人なら、きっとチームの力を借りて前に進むことを選べるんですよね。
僕は、アイドルって正しい分業制だと思っているんです。
楽曲、MV、衣装などを用意してくれるプロフェッショナルなチームがいて、彼らアイドルは、そうしたチームのちからを借りながら強くなる。最大限にチームの力を生かして人々を魅了するプロ、それがアイドルだと思っています。
今回のアルバムには、ロック、ヒップホップ、ポップス、EDM、バラードなど、ほんとうに様々なジャンルの楽曲が集まりました。しかも、候補曲は40曲以上あって、そのなかから彼らが選びぬいたものだといいます。
そういうことができるようになったのは、彼らがジャニーズという大きな組織の最後尾からはじめて、めげずに歩き続けてきたからにほかならないと僕は思います。
そうやってめげずに歩き続けてきた先に「様々な楽曲から自分たちのアルバムを作るという仕事ができる」という今がある。
それが、たぶんSixTONESにとって「少し・強くなった」ということ。
アルバムを作るの、きっと本当に楽しかっただろうな、と思います。
そうやって作られた音楽を聞くのは、僕たちファンにとっても楽しい。
これからも楽しく音楽を続けて欲しい。そう思います。
「終わりはまだまだ遙か先の方だ」と彼らは歌う。
本当に先は長いのだと思います。
でも、きっと大丈夫ですよね。
メンバーも、スタッフも、ファンも含めたTeamSixTONESは、
「最高の・チーム(Saikohno・Team)」なので。